海遊び道場

船と海の雑誌「ラ・メール」の特集「海を舞台に世界をつなぐ」に手記を書いたのがきっかけで、 常設コラム「海遊び道場」の執筆を依頼されました(大学の先輩が編集者だったもので)。 では、何を書こうかと考えた末、初心者向けのシュノーケリング講座を書いてみました。 ニューカレドニアへ来る方のお役にもたてるかも?

  

2:マスクの水の抜き方

98年7、8月号掲載

 前回はマスク、シュノーケル、フィンを使って海の中をとりあえずのぞくところまで行きました。ただし、前回までの説明でシュノーケリングを続けているとすぐに困った問題が出てきます。運の悪い人は溺れかけたかも知れません。なぜかと言うと、シュノーケルというものには水が入ってくることがよくあるからです。なぜと言われても困るのですが、基本的にシュノーケルと言うものはただのパイプですから、パイプの上端が水の中に入ってしまったり、大きな波をかぶったりすると当然くわえた口に水が入ってきます。その水を思いっきり吸い込んだあなたは、本能的にシュノーケルを外し、水面に顔をだしてむせ込んだはずです。これではおちおち魚も見ていられません。そこで、シュノーケルに入ってきた水の抜き方と水を飲まないコツをお教えしましょう。

 シュノーケルに入った水の抜き方の基本は、シュノーケルをくわえたまま一気に息を吐き出して水を外に吹き飛ばす方法です。肺活量の大きい人ならフッと一息でほとんどの水を吹き飛ばすことができます。けれども一回では水が残っている事がよくあります。そこで次に息を吸うときは、様子を見ながらゆっくりと吸ってみます。多少の水が残っていても、ゆっくり吸えばズーズー音はするものの空気を吸うことができます。そしてもう一度フッと勢いよく息を吐き出します。

 これが基本的なやり方ですが、ちょっとしたコツでもっと楽に水を抜くことができるのです。そのコツとは、水面にうつ伏せになってシュノーケリングしている時に水が入ってきたとして、そのまま顎を上に上げてからフッと息を吐いてみてください。大きく顎を上げるとシュノーケルの先端は水平より下を向くので軽く息を吐いただけで全ての水を取り除くことができます。ただし、顎を上げたまま次の息を吸ってはいけません。なぜなら大きく顎を上げた結果、シュノーケルの先端が水中に入っていることがあるからです。くれぐれもシュノーケルをストロー代わりにして海水を飲まないように気を付けてください。

 そして、シュノーケリング中にシュノーケルから水を飲まないコツは、常にフッと一気に息をはいて、様子を見ながらゆっくり吸うことです。こういう呼吸法を身に付けていれば、いつ水が入ってきても水を飲むことは無くなるでしょう。

 次に水が入ってきて困るのはマスクの中です。マスクに水が入るのは主に次ぎの3つの場合です。1)マスクのバンドが弛すぎる場合 2)マスクに髪の毛が挟まっている場合3)鼻から息をはいている場合。ほかにもマスクに穴があいている場合なんてこともありますがここでは触れません。

 さて、この3つのうち1)と2)はちょっとなれてくればこのような失敗はしなくなります。何回シュノーケリングしてもマスクに水が入ると悩んでいる人はまず間違いなく3)の場合です。シュノーケリングしているとき、鼻から息をだすとどうなるのでしょうか。マスクの中の空間は限られているので鼻から出た息はマスクから溢れ出ます。つまり顔とマスクの間を押し広げて外に逃げ出していくのです。そのとき外に出ていく空気の隙をぬってマスクの中に水が入ってくるのです。これを防ぐには鼻から息を出さなければよいのですが、わかっていても止められない人が結構いるものです。このパターンにはまってしまった人は次ぎの方法を試してみてください。シュノーケルで呼吸するときに声を出すようにスーフースーフーと言ってみてください。大抵の人はこれで鼻の息を止めることができるでしょう。ただしうまくいっても気を抜くとまた鼻から息が出てきます。口だけでの呼吸が無意識にできるようになるまでスーフースーフー頑張ってください。

 ここまでは、いかにしてマスクの中に水を入れないようにするかというお話でしたが、それでも多少の水は入ってきます。まだ口だけでの呼吸をマスターしてない人はマスクの中の水を鼻で吸い込んだりもします。まあ鼻で吸い込んでしまえばマスクの中の水は無くなりますが、かなり苦しい思いをすることでしょう。そこで正しいマスクの中の水の抜き方をお教えしましょう。

 マスクの中にある程度水が溜まってしまったら、まず顎を上に上げてください。すると溜まった水はちょうど鼻の下に集まってくるはずです。その状態でマスクの上の部分を額に軽く押さえ付けます。ここで反則技、鼻から息をゆっくりと出していきます。さんざん鼻から息を出すなといっておきながら、今度は出せとはなにごとかと御怒りにならないで下さい。理屈は簡単、鼻から出た息はマスクから溢れ出ようとしますがマスクの上の部分は手で押さえているので隙間を作れません。マスクの下の部分、つまり鼻の下から外に出ようとします。ところが鼻の下には水が溜まっているのでまず水を押し出してから空気が外に逃げ出すという寸法です。御分かり頂けたでしょうか。この方法を使うときには必ず顎を上げ、マスクの上を押さえ、ゆっくりと鼻から息を出してください。どれ一つ間違えてもかえって水が入ってくるだけです。もう一つ、うまく水が抜けても気を抜くと、鼻から息を吐く癖がついて、水抜きばかりを繰り返す悪循環に陥ります。あくまでも呼吸は口だけで行ってください。

 さて、ここまで出来たらあなたはりっぱなシュノーケラーです。こころゆくまで海の中をのぞき回ってください。と、言いたいところですがまだまだ話は続きます。なぜならシュノーケリングとは海という大自然を使って遊ぶものだからです。日差しの強いところでは日焼けを通り越して火傷をすることもあるでしょう。毒のある生物に刺されたり、強い潮流に流されてしまうことだってありえます。それではどうすれば簡単に、かつ安全に遊ぶことが出来るのでしょうか。答えは一つ、地元の人に話を聞くことです。

次回は私の住んでいるニューカレドニアを例にとって、シュノーケリングに適した場所の選び方などを御教えいたしましょう。