海遊び道場

船と海の雑誌「ラ・メール」の特集「海を舞台に世界をつなぐ」に手記を書いたのがきっかけで、 常設コラム「海遊び道場」の執筆を依頼されました(大学の先輩が編集者だったもので)。 では、何を書こうかと考えた末、初心者向けのシュノーケリング講座を書いてみました。 ニューカレドニアへ来る方のお役にもたてるかも?

  

5:道具の選び方

99年1、2月号掲載

 いよいよこの連載も5回目となりました。1回目はとにかく水の中を覗いて見ることから始まり、前回はスキンダイビングまで進みました。そのなかで私がお話しの対象としてきたのは、ダイビングなど全くしたことがない人が南の島のリゾートを訪れたという設定でした。そういうわけで、今まではマスクやシュノーケルはレンタルで十分としていました。しかし、スキンダイビングまで出来るようになると、そろそろ道具にもこだわりが出てくることでしょう。そこで今回はシュノーケリングで使う器材についてお話ししましょう。

 先ず始めはマスクです。マスク選びで一番大事なのは、自分の顔の形に合っているかどうかです。あとでお話しするように、マスクにも色々な形や材質の物が売られていますが、見た目のかっこ良さだけで選んではいけません。

 自分の顔に合っているかどうかを調べるのは簡単です。マスクを顔に付けてバンドは掛けないで手を離してみます。手を離してもマスクが顔から落ちなければ、あなたの顔に合ったマスクです。このときの注意ですが、鼻から息を吸っているとどんなマスクでも落ちないし、鼻から息を出しているとどんなマスクも落ちてしまいます。つまり息をとめて調べてください。また、一般的に日本製のマスクは日本人の顔の形に合わせて作られていて、外国製のものは外人顔に合わせて作られています。一般的な日本人は日本製を、日本人でもエキゾッチックな細めの顔をした人は外国製を試してみると良いでしょう。

 次にマスクの形ですが、使われているガラスの数によって大きく3つに分けられます。ガラス一枚の単眼式、2枚の2眼式、3枚以上の多眼式です。単眼式というのは昔ながらの水中メガネタイプのもので、値段的にも他と比べて安いものが多いようです。使い勝手には特に問題はないのですが、マスクの上から鼻がつまめるタイプのものを選んでおかないと、耳抜きがしずらくなるので気を付けてください。2眼式は後に回して、多眼式と言うのはマスクの正面の他に左右に1枚づつ小さなガラスがついているものが多く、左右の視野が広いのが特長です。ただし、その分マスクが大きく、重くなり使い勝手は余りよくありません。水中カメラマンなどが好んで使う特殊なものだと思ってくださっても結構です。

 最後に2眼式ですが、左右に一枚づつガラスがあるもので、現在最もポピュラーなタイプです。眼とガラスの距離を短くできるので視野も十分にあり、コンパクトで顔になじみやすいものが多くでています。さらに2眼式の場合、近視や老眼に合わせた度付きの物を作ることができるのが特長です。マスクのタイプについては、このような特長を考えて、あとはご自分の好みで選んでください。

 もう一つ、マスクの付加機能として鼻の部分に排水用の弁のついている物があります。このタイプはマスククリヤーが簡単にできて便利には違いないのですが、鼻から息を吐く癖がつきやすく、マスクが曇りがちになることや、弁に砂がはさまって水漏れしやすいなどの欠点もあり、あまりお薦めで来ません。

 マスクの最後は材質です。これはそのまま値段に関わってきて、一番安いのは軟質プラスチック、次が普通のゴム、一番高いのがシリコンゴムとなっています。プラスチックのものはおもちゃと言ってもよく除外します。普通のゴムの物は機能的には十分なのですが、色が黒しか出来ず敬遠され、現在はカラフルなシリコンゴム製の物が主流となっています。シリコンゴムの方が普通のゴムの物より柔らかくて装着感が良く、長く使っても堅くなりにくく出来ています。シリコンマスクの注意点は色素を吸収することです。透明のシリコンマスクに黒いゴムのシュノーケルを付けていると、マスクのシュノーケルに触れている部分から、黒い色素がシリコンの中に染み込んで汚くなってしまいます。女性のファンデーションも同様で、透明のマスクがいつの間にか肌色に染まってしまう様なことが良くあります。おそらく皆さんが選ぶのもシリコンマスクでしょうから色物には十分注意して使ってください。

 マスクの次はシュノーケルです。元はといえばただのパイプだったものが、今では数多くのメーカーから色々なものが売り出されています。それぞれ水を抜きやすくする工夫や、水が入いりにくくする工夫、泳ぐときの抵抗を少なくするデザインや、くわえ心地の良いものなど千差万別です。結局のところ、一番安いものでも十分使えるけれど、高いものほど快適になると言った代物です。見た目と予算で選んで結構です。数百円から1万円以上するものまで出ています。ただし、マスクの所でも言いましたが、シリコンマスクに黒ゴムのシュノーケルを付けると色移りするので気を付けてください。

 続いてフィンですが、これもまた色々なタイプのものが売られていますが、大別すると2種類あります。1つはフルフットとよばれる素足のまま履ける物で、もう一つはストラップタイプとよばれるダイビングブーツを履いて使用する物です。フルフットの特長は手軽さです。ダイビングブーツを別に買う必要もなく気楽に着けたり外したり出来ます。もうひとつフルフットの特長としてフィンの大きさが小さめになることも挙げられます。これは、タンクを使うダイバーがフルフットを使用する場合は、ブーツを履いた上に素足より2サイズ位大きなフィンを使用するように設定されているからで、シュノーケリングを主体とする場合は小さめのフィンの方が適しているので、フルフットはシュノーケリングに向いているといえます。

 ストラップタイプをシュノーケリングに使う最大のメリットは、ブーツを履いているので、フィンを脱いだとき岩場でも熱く焼けたビーチでも平気で歩けることです。デメリットはサイズがタンクを使うダイバー用に設定されているので、シュノーケリングには大きめになることと、ブーツを別に買わなくてはならないことです。

 フィンを選ぶときに基準となるのが、先ほどから触れているフィンの大きさと硬さです。一般に脚力の強い人は大きく硬いフィン、弱い人は小さく柔らかいフィンと言われています。ただし、現在市販されているほとんどの物は、数十キロにも及ぶ装備を着けたタンクを使うダイバー用の物なので、シュノーケリングに使うのであれば、小さく柔らかいものを選んだほうが良いでしょう。持ち運びの軽便さを考えても、小さく軽いフィンを選ぶことをお薦めします。

 最後にこういった道具はどこで手に入れるかと言うと、ずばり、ダイビングショップです。と言われても縁のない方が多いと思いますが、現在、日本全国たとえ海のない県でもダイビングショップは溢れています。本屋さんでダイビングの雑誌をめくってみれば全国各地のショップの広告がいっぱい出ていますし、電話帳で調べてみてもすぐに見つかるはずです。そしてあなたはダイビングショップを訪れて、シュノーケリングとは違うダイビングの世界を垣間見る事となるでしょう。次回、最終回はスキューバダイビングへのお誘いです。