世界の国からMacintosh

日本のコンピューター雑誌「マックピープル」に連載していたコラムのノーカット、 オーサーズエディションです。ニューカレドニアのコンピューター事情についてがテーマです。

  

ニューカレドニアと鶴岡市のテレビ対談に挑戦!

2003/10/15号

 誌面でiChatAVが特集されていたものの、これは自分には関係ないだろうと読み飛ばしていたのですが、昨日、急きょ読み返す必要が出てきました。それというのも山形県鶴岡市の市議会議員さんから、鶴岡市とニューカレドニアをつないで、iChatAVを使ったテレビ対談がしたいとの相談を受けたのです。

 なんでも鶴岡市の中学生16人が姉妹都市であるニューカレドニアのラフォア市にホームステイに来るので、その最終日に現地にいる子供と鶴岡市の子供たちでテレビ対談がしたいとのこと。そしてその議員さんは大のマック好きで、アップルからiBookとiSightを借りる手配は済んでいるとのことでした。

 最初に相談を受けたのはニューカレドニア観光局なのですが、ニューカレドニアで「インターネット、マッキントッシュ」とくればAQUAの高橋しかいないと、私のところへ話が回ってきたのです。ニューカレドニアではいまだにほとんどのネットユーザーがアナログ接続で、最近やっと企業のオフィスなどにADSLが導入され始めたところです。

 しかも一般に普及しているADSLは下り256キロ/上り128キロbpsの低速回線で、日本との接続となると途中で必ずバンクーバーのサーバーを経由しなくてはならず、日本のアナログ回線並みの速度しか出ません。例外としてうちの店は下り512キロ/上り256キロbpsの高速(?)回線を持っているのですが、それでも日本のISDNに毛が生えたようなもので、条件がいい時で下り240キロ出ればいいほうです。

 マックピープルのiChatAVの特集には、「帯域を200〜100キロbpsに落とすと音声は途切れることなく通話できるが、画質はかなり落ちる」とあります。逆にいえば200キロ出ればなんとかなると判断し、ネットカフェ(256キロ)で実施する予定だったものを、少しでも可能性のある当店(512キロ)に変更してもらい、テストのためにiSightをなるべく早く店に持ってきてもらうようにお願いしました。

 本番実施予定は夕方5時半。5時を過ぎてiBookとiSightが店に到着しました。鶴岡市の会場では多くの父兄の方が今か今かと待ち構えているとのことで、なんとか30分で接続を確保しなくてはいけません。iBookにiSightを接続し、店内のLANランを経由して映像チャットを試みてみました……が、お互いに呼び出しはするものの、応答ボタンを押してもしばらくすると「相手が応答しませんでした」と表示されて接続が確保できません。

 それではと、音声チャットを試みても「相手が応答しません」だの「サーバタイムアウト」だのと表示が続き、これも接続不能。これは困った!考え得る改善策は……そうだ、ルーターを外してダイレクトにADSLモデムと接続すれば少しは速度がアップするかもしれない!店のカウンターの下に張り巡らせてある店内のLANケーブルを引っ張り出し、パワーマックG4とADSLモデムを直結、ネットワーク設定でPPPoEの設定をして、さらにiSightを接続しました。

 鶴岡市の会場と音声チャットのテスト再開。「もしも〜し?聞こえますかぁ〜?」とiSightに向かって叫んでみると、なんだかスピーカーからざわざわした音が。「聞こえます、聞こえています。鶴岡の会場に高橋さんの声が届いています!」「やりました!こっちも聞こえています!もしかしたらルーターのファイアーウォールが原因だったのかもしれませんね。続いて映像チャットのテストをしましょう!」

 実はこの後、映像チャットはおろか音声チャットも、二度とつながることはありませんでした。不安定なニューカレドニアのネット回線は、やっぱり気まぐれです。本当に奇跡のような音声チャット1回を残して、ニューカレドニアと鶴岡市をつなぐネットテレビ対談は夢と消えてしまったのでした。関係者のみなさん、お疲れさまでした。