ニューカレドニア 水中ウエディングの旅

 今回世界で初めての水中ウエディングをしたということで、せっかくの想い出を覚えているうちに記しておこうと思い、PCに向かいました。記憶が定かでない部分や勘違い、記述の誤りなどもあると思いますがご了承くださいませ。

少しでも楽しく読んでいただければ幸いです。ばぶきち

 

プロローグ・・・出会い

 私がその情報を知ったのは2001年の秋であった。正確に言うと、「おい、これ読んだんか」と言った彼の手から渡された“海と島の旅12月号”のページをめくった11月のある日のことだった。いつも目にしている“海島”のページとはちょっと違った色のブルーが瞼に焼きつく。そして、海の中の写真であるはずなのにそこに似つかわしくない光る物体と、真っ白なタキシードにウエディングドレス。。。「ニューカレドニアみたいやで」という彼の言葉を遠くに聞きながら、目の前にある写真の状況を把握できない状態で、頭の中が徐々に深海へと誘われていく。

 私たちが結婚式を挙げたのはその1ヶ月前、10月のことであった。バリで民族衣装を着て挙げた式は、祝福の舞や祈りの儀式などが折り込まれた荘厳な雰囲気の中での感動的なもので、日本からも多くの友人たちが駆けつけてくれたのだった。にもかかわらず、(ウエディングドレスが着たかった)という気持ちを捨てきれないでいた私に彼は、このニューカレドニアでの水中ウエディングを提案してくれたのだ。

 “海島”にはカラーの写真が全面に載った見開きが2ページ。そして、「水深6〜8メートルほどの海中に設置されたUFOのようなスコープでウエディングをやってしまおう!」というようなコメントが少々。なんだかよくわからない。。。わからないけど、とにかくおもしろそうだなぁ。。。動機の不純さ(?)はともかくとして、私はあっというまにこの写真と内容に惹かれ、今まで旅行の行先としてすら全く検討したこともなかったニューカレドニアに、足を踏み入れる計画を立てることとなったのである。

 もっと詳しい情報はないものか、と探し当てたのがニューカレドニア観光局のHP。ここに書いてあったアドレスを元に、今回お世話になった「BLUE WHITE MARIAGE」さんにコンタクトを取り、いろいろとお伺いさせていただきながら式を申し込むことになった。BLUE WHITE MARIAGEさんは式のプロデュース会社なので、旅行自体はツアーを予約することにして「やっぱりニューカレドニアに行くんだったら離島に行かなくちゃ」なんてよく知らないくせに勝手な思い込みだけで、イル・デ・パンへも行くことを決定。

 そうなるとヌメアでのスケジュールが厳しくなるなぁ。。。式の日は1日つぶれるイメージかな?そういえば前日に打合せがあるとか言ってたなぁ。町にはかなりおいしそうなレストランがわんさかあるようだし、市内観光もしたいし。。。海はイル・デ・パンで堪能して、、、とまあ、かなり先走りながらだんだんと私の頭の中は、白い砂浜できれいなおねーちゃんがパレオをひらひらはためかせているあの世界に染まってしまっていたのだった。

 

8/10(土)1日目 出発

 日本の真夏は、南半球にあるニューカレドニアの真冬にあたる。今回の旅行にあたっては何人もの方から「いいねぇ、暑いんだろうね〜」というコメントをいただいたが、真冬の現地は平均気温が20度、日本の秋ぐらいの気候で朝晩はかなり冷え込むのだ。このことで一時は旅の時期を変更しようかとも考えたが、一度盛り上がった気分を後に延ばすのには抵抗があった。

 そんな折、私は一足お先に、海ではなく地面にダイブしてしまったのだ。顔面からまともに突っ込んだ自転車事故で、歯は折れるわ唇は縫うわで半魚人のような面相に。。。何ヶ月もマスクをする生活が続き、季節柄花粉症と間違われながら(これじゃあ水中結婚式どころか海に潜るなんてムリかもしれない)と、かなり深く落ち込んでしまった。さらに彼の仕事が立て込んできて、夏休み返上になるかもしれないという話が舞い込んできた時に(もしかして我々はニューカレに縁がないのではないか。。。)とすら思ってしまったのだ。

 このような障害を乗り越えてなんとか出発当日の朝を迎えた。関空の集合時間はなんと8時半。夜中までのパッキングで寝不足の眼はしょぼしょぼ。突然「おい、外!」という彼の声にバルコニーに出てみると、なんと大きな大きな虹が真正面にくっきりと輝いていた。美しい半円状に全貌を現したその姿は本当に見事で、私は生まれて初めて切れ目のない完全な虹を目にしたのである。思わずカメラを片手にして戻るも、あまりの大きさにファインダーに収まらない。フェードアウトしつつある虹の端に向けてシャッターを切りすっかり目が覚めた私は、浮き足立ちながら高揚した気分で家を後にした。

 10時半、関空からエア・カランは飛び立った。ここに辿り着くまでの様々なことを思い出すと、いつもの旅行とは一味違う気分に浸ってしまう。離陸の瞬間はなんともいえない気持ちになりながら、結局完治しなかった傷跡を残したままの顔で窓の下の海岸線をいつまでも見続けていた。そうして、旅行の最終日にはニューカレドニアからの帰国の飛行機が機材故障のためフライトキャンセルになり、さらに3泊延泊することになった、ということで今回の旅行は出発前から家に帰宅するまでイベント(?)盛りだくさんの思い出深いものとなったのである。

 我々のスケジュールは、1日目の夜にヌメア泊、そこからイル・デ・パンに3泊して、またヌメアに戻って2泊、というものだった。最終日は夜中のフライトだったので実質ヌメアの滞在は3日間。結婚式は海の中に潜るので、飛行機に乗る24時間以上前に設定しなくてはいけない。ダイブスコープは水深7mのところに沈められており、そんなに深くないからまあ大丈夫じゃないか。。。という話もあったのだが多少でも危険と思われることは避けたかった。そしてこの時期、午前中のほうが午後よりも風がなく海が凪いでいるとのことで式の日程として当てはまるのはたった1日、帰国前日の午前中に決定となった。もし風が強く吹いてしまい波が立ってしまったら、市庁舎ウエディングに変更・・・今更このプランが流れるなんて考えたくもないことだったが、相手はお天道様。泣いても笑っても祈っても、自分ではどうすることも出来ない場合は「大丈夫」と信じるのが私流。

 約8時間半のフライトを終えた飛行機がトントゥータ国際空港に到着し、空港内で両替をしてからホテル行きのバスへ乗り込む。少し寒い。外を見るとものすごい風が吹いているようだ。1時間ほどしてホテルのエントランスにバスが滑り込み、チェックインをして部屋に入ったときにはようやくホッと一息ついた状態であった。

小腹がすいていたのでルームサービスでサンドイッチをお願いするが売り切れ、とのこと。すっかり頭の中がサンドイッチモードに切り替わっていた私は激しく落胆してしまったのだが、サラダにパンがついているということを聞きそれなら。。。と思い直してサラダ&スープを注文する。しばらくして届けられたものは、「これがサラダ・・・?」と驚くぐらいチキンやハムや卵が乗った豪勢なもので、非常に美味しい。本日のスープは具のないブイヤベースのようだ。たまにちぎれたエビなんかが入っていて濃厚な味わい。半分の長さに切ってあるフランスパン1本分も添えられており、イメージしてたよりも優雅なルームサービスで初日の夜を終えることができ、かなり満足しながら眠りについたのだった。