Bay Breeze編

Baybreeze夫妻のハラハラ・ドキドキ・リフー探検の旅です

 

4日目:いろんな事が起こる

 今朝も、波の音と鳥の声で目が覚める。外は朝日がまぶしい。つまり快晴! シャトーブリアン湾の砂浜を少し散歩する。太陽と海しかない、単純な光景。しかし、この単純さが何とも心地よい。

 そのうち妻も起きだし、昨日Korailで仕入れた食材で朝食をとる。バゲット、サラミ、テリーヌ、パテ、チーズ、葡萄。それとフルーツジュースで、合計1300CFPほど。しかし、テリーヌとパテは多くて食べきれず、残りは冷蔵庫にしまって翌日また食べることにした。

 

 さて、今日もリフーを走るぞ! 昨日は島の南部を巡ったので、今日は北部へ。

 ウエの集落を抜けて一路空港方面へ走る。最初は、断崖で有名なドキンへ。歩いている人に手を挙げて挨拶すると、みんなニコッと笑って挨拶を返してくれる。中には、両手を挙げてガッツポーズをする人もいて、なんだかこちらまで嬉しくなる。

 ワナハム空港の周囲をグルッとまわり、幾分狭い一本道を走る。地図を見ながら走るが、途中でよくわからなくなった。あれ、この道でいいのかな?などと思っていると、教会が見えてきた。1台のレンタカーが止まっていて、とりあえずその隣に車を止めてみる。ここがドキンなのだろうか。ウロウロしていると、前方からフランス人が何人かやって来たので尋ねてみる。やはり、ここがドキンだった。もう少し行ったところに、パーキングがあると教えてくれた。

 車を降りて、海を覗き込んでみた。私たちは言葉を失った。なんて綺麗な海なのだろう! 底の様子が手に取るようにわかるぐらい澄んでいて、色は表現できないようなブルー。こんな場所が地球上にあったなんて!

 私たちが海に見とれていると、どこからか声が聞こえてきた。「ボンジュール! 英語を話すか?」この場所に2室のコテージのみという民宿があり、そこのテラスから白人男性が私たちに声をかけてきたのだ。

「ボンジュール! 英語はOKだ。ここの景色はベリー・グッドだ。とても素晴らしい」

「そうだろう! 綺麗だろう!」

と、まるでここが自分の海みたいな言い方をする。ここの眺めをひととおり自慢した後、その男性はテラスのデッキチェアに横たわった。

 近くの建物から、3人の子供たちとその母親らしき人が出てきた。挨拶して、写真を撮らせてもらう。みんな、本当に人なつこい。

 ドキンの眺めを満喫した後、今度はエアソという場所まで移動。ドキンからエアソへの一本道は森の中、時折集落がある。本当にこの道でいいのかどうか、だんだん不安になってきた頃に、道ばたに車を止めて何やらやっている3人のローカルがいた。ちょうどよかったので、彼らに「エアソへはこの道でいいか?」と聞いてみた。フランス語だったので私には皆目わからないが、妻がなんとか「突き当たったら右に曲がれ」と聞き取った。

 ああ、よかったと思って礼を言って走り出そうとすると、3人が私たちに手招きしてなにか言っている。妻も何を言っているかわからないという。身振りで「エンジンを切ってちょっと降りてこい」と言っているらしい。え、一体どういうことだろう? このまま走り去ったほうがいいんじゃないか?しかし悪い人でもなさそうだし、どうにでもなれ、という気持ちでエンジンを切って車を降りた。妻も不安げである。

 車を降りると、彼らは道端に生えている草の茎を折り、私たちにそれぞれ手渡した。そのまま手招きをする方へ行ってみると、石で囲った中から煙が出ていて、何か燃えていた。その上に、手渡した草を置くように言われる。わけがわからないので、言われたとおりに手に持った草を置いた。すると3人は急に笑顔になり、しきりに私たちに話しかける。わからない、という意志を表すために私が首を振ると、3人のうちの一人が、英語で一言「protection for you !」と言った。その言葉を聞いたとき、それまで不信感でいっぱいだった私たちは急に心が温かくなった。そう、彼らは私たちの道中の安全祈願をしてくれたのだ! 礼を言って握手をし、車に乗り込むと3人は手を振って見送ってくれた。

 しばらく走ると確かに突き当たり、それを右に曲がる。シェペネヘという集落を抜けると、エアソの集落へ入る。すぐに教会が目に付いたので、写真を撮ろうと思って車を道端に止めた。すると、またもやどこからか大きな声で「ヘーイ! 英語を話すか?」と叫んでいる。振り返ってみると、掘っ建て小屋みたいなところに6人の若者が寝そべったりしていた。どうやらそこから声がかかったらしい。 私が「英語を話すぞ!」と叫び返すと、こっちへ来いという。どうも今日はこういうことが多い。

 若者達がたむろしているところまで行くと、みんなニヤニヤ笑いながら私を見る。東洋人が珍しいのだろうか? 私が英語で話しかけてみるが、ニヤニヤするだけで誰も返事をしない。英語を話すかと聞いておきながら、ほとんど喋れないらしい。若者の一人が、ジュースの紙パックを手にして飲んでいる。それを私に差し出して、「ドリンク?」と言う。一体何のジュースだ?と聞くが、差し出すだけで何も答えない。仕方ないので、受け取って飲んでみる。お、ワインじゃないか! お酒にあまり強くない私が、ゴクゴク飲んでしまった。思わず大声で、「ディス・イズ・ワイン!」というと、みんなキャッホーと叫びながら大喜びし、私に握手を求めてきた。

私は「写真を撮ってもいいか?」と聞いてみた。そのときの反応が凄かった。それまでグタ〜ッとしていたのが、みんな一斉に飛び起きて一つに固まり態勢を整え、瞬時にしてポーズをとったのだ。あまりの反応の素早さに唖然としてしまったが、気を取り直してシャッターを切る。

 若者達に別れを告げ、旅に戻る。さらに走ると道が行き止まりになり、そこから徒歩で階段を登ると教会があるらしい。これは明日再訪することにして、そろそろ昼ご飯どきだし、ウエに戻ることにした。

 途中、シェペネヘ(ボートを係留するところ、という意味の地名)の集落で写真を撮ったりしていると、白人のバックパッカー風の3人組から声をかけられた。
「どこへ行くのか?」
「ウエまで行くけど」
「ちょうどいい。乗せてくれないだろうか?」

というわけで、小さな車に3人が乗り込んだ。男性2人、女性1人。フランス人だという。

 ウエへ戻る道中に話を聞いてみると、男性のうちの一人はリフーに住んでいて、エアソで数学の教師をしているという。あとの2人は、その教師の幼なじみ。パリに住んでいて、バカンスを取ったので遊びに来たのだという。私が「何日間、休みを取ったのか?」と聞くと、40日だという。彼らは、日本人の休みが少ないのを知っていて、私の夏休みが1週間だと知ると、一様に哀れんでくれた。

思わず私が「I want more・・・」と呟くと、みんな爆笑した。ウエに着き、いつもの軽食スタンド前で彼らを降ろして記念撮影、握手をして別れた。

 そのまま、私たちは昼食を仕入れた。テイクアウトして部屋のテラスで食べる。この時間になると、シャトーブリアン湾の海の色が冴え渡る。何と表現したらいいのか…目が覚めるようなターコイズブルーの海がガラスのような透明感を得て、陽光に輝いている。本当に美しい。それを眺め、貿易風に吹かれながらの食事…これ以上優雅な昼食があるだろうか。

 昼食後、再び車を走らせてロンガニビーチへ。すると、島の住民が道端から出てきてしきりに手を振る。車を止めると穏やかな口調で話しかけてきた。

「ジュ ヴドレ アレ …」

どうやらロンガニの先の集落まで行きたいらしい。ロンガニまでしか行かないけど、と告げると、それは好都合!という感じで、私たちが「乗っていいよ」と言う前に自分から車のドアを開けて乗り込んだ。意外と男前の若者だった。ロンガニ村に入り、しばらく行ったところで車を止める。

「ヌ ザヘトン イスィ 私たちはここで車を停めるから」

というと、若者は車から降り、礼を言って歩いていった。またほかの車に乗り継ぐのだろうか。

 ロンガニビーチで座っていると、どこからか犬を連れた老人が現れ、「サヴァ?」と私たちに話しかけてきた。私が「ウィ、サヴァ」と答えると、大きく肯いて隣に座った。英語が全く通じないみたいなので、妻を通じて名前を聞いてもらう。教えて貰ったが、とても覚えられない。私たちも名前を教えると、逆に老人には理解しがたいらしく、首を振りながら笑っていた。

 老人が、しきりに私たちに話しかける。しかしこの老人、前歯が2〜3本抜けている影響で、喋るときに歯の間から空気がもれるため、妻も何を言っているかほとんど聞き取れないという。老人も埒があかないと思ったのか、そのうちに喋らなくなってどこかへ去っていった。

  ここで、ちょっと話題変更してシュノーケリングの話。今日も、とある場所でシュノーケリングに挑戦してみた。微妙な場所なので、どこかは明かすことはできないが、海の綺麗さ・透明度は抜群。海に入らずとも珊瑚の様子が手にとるようにわかる。フランス人の先客が何人かいたが、挨拶して仲間に入れて貰う。デジカメを水中ハウジングにセットし、水中写真の準備を整える。

 今は真冬、水が非常に冷たく感じる。覚悟を決めて海へ入る。うう、冷たい! 水泳には自信のある私だが、とにかく寒くて呼吸が猛烈に早くなる。うまく息ができない。さすがに危険を感じたので、近くの岩場に捕まって体が慣れるのを待った。いっそ、シュノーケリングセットを外して素潜りにしようかと思ったが、デジカメの操作が出来なくなるので、水中マスクだけは付けることにした。

 息が整ってきたので、あまり岸から離れないようにしてシュノーケリングを楽しんだ。おお、魚がたくさんいる! それをデジカメで撮ろうとするものの、近視でうまく画面が見えないうえに、シャッターのタイムラグが大きいので、シャッターが降りたときにはもう魚がいない、という状態が続いた。やはり、慣れないと上手に撮れない。そんな中でなんとか撮れたものを掲載してみる。シュノーケリングは2度目、というド素人の私でも、ここは素晴らしい場所であることが十分にわかった。情報をくださったAQUAの旦那様、ありがとうございました。

 話を戻して…ロンガニビーチで特に海も入らずボーっとしたあと、パン岬にある灯台へ行こうということになった。ロンガニからさらに南下し、岬へ行く道を探る。南洋杉がたくさん見えてきたので、おそらくあの辺だろうと思ったが、どうしても岬への道がわからない。それらしき道はあるが、私道の可能性があるので迂闊に乗り入れることができない。仕方ないので岬は諦め、陽も落ちてきたことだし、ウエに戻ることにした。

 ホテルでの夕食を終えた私たちは、星を見るために車を走らせた。ウエの集落は一応この島の中心部なので、街灯が多い。街灯がなくなるところまで走り、路肩に車を止めて星空を見上げた。ほんとうに、言葉が出ないぐらいの満天の星だ。夜空に星が敷き詰められた感じ。天の川もくっきり見えた。私はデジカメを取り出し、星空撮影を試みた。デジカメの性能上、天の川までは写らないだろうと思ったが、南十字星ぐらいは撮れると思い、三脚にセットして撮影。で、これがそのときの写真。南十字星、おわかりいただけるだろうか?

 寒いので車の中に戻り、妻と二人でなおも星空を眺めていると、スーッと光が流れた。「あ、流れ星!」と、二人同時に叫んでいた。このとき、私はある本の一節を思い出していた。それはサン・テグジュペリの本だった。彼がサハラ砂漠で遭難したとき、砂だけの世界に時折、黒い岩石が落ちていた。彼は夜空を見上げ、満天の星空を見ながらこのように書いている。

「リンゴの木の下に敷いた卓布の上には、リンゴしか落ちてこない。それと同様に、星空の下にある卓布の上には、星しか落ちてこない」

つまり、砂漠で時折見かける岩石、それは隕石である。それを、このように記しているのだ。この星空を眺めながら、初めて私はその本の一節を実感できたのだった。