Bay Breeze船長のヌメア航海記!?

Baybreeze夫妻、3回目のニューカレドニアの旅。 今回はレンタボートを使って無人島巡りをしたり、レンタカーで温泉へ行ったり、ヌメアだけの滞在ですが盛り沢山です(旦那と女将で引きずり回したという噂も・・・?)

 

3日目

5月3日(月)

 7時にホテルを出て、ポート・モーゼルに向かう。港に着くと、既にAQUAの旦那さんは到着していた。ボート屋が開くのは8時頃とのことだ。朝市で昼食を調達するつもりだったが、月曜の朝市は閑散としていて、ほとんど何もない。結局ビエイユ・フランスでパンを調達した。

 ポート・モーゼルに戻ると、ボート屋がオープンしていた。

 予約変更もなんなくクリアし、ボートを係留している桟橋まで車で移動。ボートは全長6.5mのスポーツフィッシャーで、ホンダの130馬力4ストロークのエンジンが搭載されている。船名は「UA」。これに荷物を積み込み、ロープを解らんして、8時15分頃出港! 自分の操船でポート・モーゼルから出港するなんて夢のようだ。
 GPSなんて気の利いたものはない。事前に、旦那さんから海図を戴いていたので、それを参考に針路をとる。日本と違い、リーフが点在しているので気が抜けない。リーフの位置は一応把握したつもりだが、旦那さんに指摘してもらわなければ、リーフの存在が今ひとつよくわからない。情けない船長である。
 8時40分頃、ゴエラン島に接近。上陸のため、旦那さんが船首に立って暗礁の位置を見極め、その指示に従って舵をとる。私はエンジンをチルトアップさせ、プロペラが海底を叩かないようにする。座礁しない所まで船を島に近づけ、旦那さんがドボンとアンカーを降ろしてくれる。ふう、これでゴエラン島に着いた!
 この島は砂州で出来ているため、遠浅である。小さな無人島で、時期によっては海鳥の繁殖地になるため、上陸禁止となる。まずは旦那さんが海に入り、私も続く。珊瑚がないのでシュノーケリング向きではなく、あまり魚はいない。しばらく私たち3人で島を独占していたが、日本人3人とフランス人ガイド1人のジェットスキーツアーがやってきた。ヌメアからジェットスキーで来るのは、さぞかし恐ろしいだろうと思う。

 1時間ほど滞在して、ゴエラン島を出発。今度は、ラレニエ島を目指す。リーフを南側に迂回し、目視で航行する。20分ほどで、ラレニエ島に到着。ジェットスキーツアーも、後を追ってきたのか、私たちのすぐ後に到着。

 ここは珊瑚の海で、波打ち際でも魚がいた。しかし旦那さんが、100mほど先の所で手招きし、「ここまで来てごらん、すごい綺麗だよー!」と教えてくれる。暖かいので、妻もニューカレで初シュノーケリング。海の透明度も申し分なく、多くの熱帯魚を目にすることができた。デジカメに水中ハウジングをセットして、水中写真撮影を楽しむ。
 しばらく海で遊んだあと、休憩。ジェットスキーツアーが帰って行ったので、この島は私たちの独占状態だ。ここで昼食をとることにした。
 13時30分頃、ラレニエ島をあとにする。私が立てた計画では、ここからシニアル島へ向かう予定だったが、旦那さんが「ダンベアパスを抜けて外洋へ行ってみますか? 水の綺麗さが全然違うよ」と提案。せっかくだから行ってみることにした。
ダンベアパスに設置されている航路標識を目標に南へ向かう。外洋から海水が流入しているからか、少し三角波が立っていてボートが揺れる。日本では、レンタルボートのルールで穏やかな海しか知らないので、緊張する。
 いよいよ、ダンベアパスを抜けて外洋へ。波が変わり、うねりが大きくなる。海の色が、濃いコバルトブルーに変わる。北西へ針路をとり、リーフ沿いにしばらく航行すると、旦那さんの案内でリーフ近くまで船を寄せ、そこでアンカーを打つ。リーフには大きな波が打ち寄せ、見ていると少し気味悪い。旦那さんによると、ここが絶好のダイビングポイントらしいが、上級者向けだという。

 船がアンカーを打った辺りの水深は12mほどだが、そこから急激に海底が落ち込んでいて、ちょっとリーフから離れると水深150mを超える。私と妻は、おそるおそる船から海に入った。一応外洋なので、万が一のことを考えて、旦那さんは船に残ってくれた。

 マスクを付けて海中を覗くと、美しい珊瑚、たとえようもないブルーのグラデーション、息をのむような光景だった。ただ、海底が急激に落ち込んでいるところだけに、不気味だった。その様子を見た妻は、「私、やっぱり怖い。船に戻る」という。私は妻を船まで連れて戻り、再びシュノーケリングを楽しむ。妻は、旦那さんに船からロープを渡してもらい、それに捕まって遊んでいた。
 美しい海中を十分に堪能した後、旦那さんが持参したトローリングの仕掛けを流しながら、のんびりと船を走らせる再びダンベアパスを抜けてリーフ内に入り、今度はシニアル島を目指す。シニアル島は、今回訪れた中では最も大きな無人島で、立派な桟橋がある。タクシーボートが1隻停泊していたので、その反対側に着岸。旦那さんがタクシーボートの船頭さんに話しかけている。彼の奥さんは日本人で、もうすぐ日本へ移住するから、タクシーボートの会社を売りに出しているという。旦那さんが、「加藤さん、700万フランで売るんだって。どう?」なんて言うから、一瞬本気で考えてしまった。だが私にそんなことが出来るわけもなく、「ローンOKですかね?」ととぼける。
 シニアル島ではだいぶ陽も傾いていて、海に入らず島をウロウロしただけで出発。これで、無人島巡りも終わり、ヌメアのポート・モーゼルへ帰港する。
 ニューカレドニア特有の貿易風が吹き始めていて、海が荒れ気味だ。一直線にポート・モーゼルへ戻ると、もろに風を受けて辛いので、ヌー島の影を利用して風を防ぐルートで戻る。これは事前に旦那さんからアドバイスを受けていたため、航海計画にも反映させてあった。

 旦那さんが「ここからはあまりスピードが出せないですよ」とおっしゃるので、船速を控え気味に走らせる。予想通り海が荒れてきて、小さなボートは大きく揺さぶられる。旦那さんによると、これはまだ全然マシな方で、ひどいときはもっと荒れるという。私は必死に針路を保ちながら、体を支えていた。時々、船首から波に突っ込み、バーンと飛沫があがる。こんな海で走ったことがない私は、次第に恐怖心が芽生えてきた。本当に、ヌメアへ辿り着けるのだろうか…。

 そのとき、旦那さんが「ちょっと操船を代わってくれる?」と言った。私は、舵輪を旦那さんに渡した。旦那さんは手本を見せながら、こういう海況の操船方法を私に教えてくれた。再び操船を代わり、教えてもらったとおりにやってみる。すると、先ほどよりも揺れが緩和され、しかもスピードを出して走れるようになった。なるほど、こうすればいいのか。スーッと恐怖心が消え、私は夢中になって舵輪とスロットルを操った。

 20分ぐらい波と格闘しただろうか、ヌー島の影に入ったあたりで急激に波が収まった。島影を利用することで、こんなにも違うのかと実感。私はスピードを徐々に上げ、リラックスして操船した。レストラン1881が右手に見え、ヌー島と本島を結ぶ橋をくぐると、もう目の前はポート・モーゼル。スピードを落とし、ゆっくりと入港する。

 さて、最後の仕上げは着岸だ。旦那さんが船首に立ち、着岸に備える。着岸場所が少し狭いが、なんとかなるだろう。過去3回、着岸は完璧だったのだ。ところが風の影響を考慮しなかったため、自分の思うとおりに船が進んでくれない。おかしいな、と思った頃、旦那さんが「後進! 後進!」と叫ぶ。失敗したな、と思ったが、まだどうにかしてやろうという頭があった。再び、旦那さんが「後進!」と叫んだとき、ハッと思って舵中央とし、後進をかける。強い後進をかけたため、船首が右に回り始める。あわてて舵を右に切ったが時既に遅し、うちの船首と隣の別のレンタル艇の船外機がガンと当たってしまった。私はショックを受けた。見たところ、損傷は受けていないようなので、気を取り直してもう一度トライ。だが2度目も、ぶつけはしなかったが失敗。3度目でようやく着岸に成功した。

 あまりにショックが大きく、呆然としながら旦那さんに言われるままに係留する。係留が終わった後、旦那さんからアドバイスを受ける。それらを真摯に受け止め、次回以降の参考にする。

 レンタル料金などの精算は明日、改めて私がここに来て行うことにして、楽しかった無人島巡りも終了。最後の着岸失敗さえ無ければなぁ…ま、いい経験になった。

 ニューカレドニアの海を自分で操船するという夢が実現した。だが、旦那さんのガイドが無ければ決して実現することはなかった。いろいろとアドバイスしてくれ、貴重な経験をさせてくれたAQUAの旦那さんに、改めて感謝!である。