ニューカレドニア 水中ウエディングの旅

 今回世界で初めての水中ウエディングをしたということで、せっかくの想い出を覚えているうちに記しておこうと思い、PCに向かいました。記憶が定かでない部分や勘違い、記述の誤りなどもあると思いますがご了承くださいませ。

少しでも楽しく読んでいただければ幸いです。ばぶきち

 

8/13(火)4日目

 朝から嫌な音がしたような気がして目が覚めた。雨だ。今日は楽しみにしていたピローグの日なのに。。。でも、南の国は天気が変わりやすいから〜、なんて自分を慰めながら朝食をいただく。食事を終えてロビーを通ると、なんと暖炉に火がともっている。やっぱりみんな寒いんだ、、、と落ち込み気味になりながら、小雨が降る中とりあえずピローグ乗り場まで車で送ってもらった。雨足はどんどん激しくなっている。セント・ジョセフ湾に到着した車のフロントガラスには勢いよく降る雨が流れていた。やみかけてはまた降り、というのを何度か繰り返した後にようやく外へ出れるほどまで落ち着いた天気になりドライバーは我々に手を振って去っていった。

 他のホテルからの合流者も多く、当初2人で貸し切りか??などと様子をうかがっていたものの最終的には20人以上に膨れ上がりかなり賑やかな状態になっていた。日本人は我々だけ。下は2歳になっていないかと思われるちいさな金髪の女の子から、上は還暦も過ぎたであろう老夫婦まで。各ホテルでの説明がなされていなかったのか我々を除く参加者はGパンやスニーカーを履いており、浅瀬をじゃぶじゃぶ歩いていかなければピローグに乗れないこともあって、いきなりズボンを濡らした方の嬌声を聞きながらスタート。

 曇天の中ではあったが滑らかに海の上を進んでいくと、透き通った水面はまるでガラスのようでたくさんの魚たちやイカまでが泳いでいる姿がしっかりと確認できる。子供はもちろんだが、大人まで身を乗り出して凪いだ海を食い入るように見つめたり、周りに広がる森と海と空のコントラストに目を奪われていた。途中多少雨に降られたものの、常備してあった大きなビニールシートを乗りあった人たち全員で被って雨を凌ぎながら、後半には暑いぐらいの日差しとまばゆい景色をたっぷり堪能することとなったのである。

 ユピ湾に到着したピローグから降りた我々は、そこからメリディアンまでトレッキングすることとなった。申し込み時に往復送迎をお願いするか、森の中を散歩しながら帰るか、という2つのコースを選択することができるのだ。森のコースは一本道で40分ほど、と聞いていたので運動不足になりがちなリゾートでは当然こちらの選択に。山歩きの好きな彼は楽しそうに草を分け入って森へと突入していったのだが、途中「これが道??」という状態の場所が何度もあり、本当に間違ってないんだろうか。。。でもまず迷わないですよって言ってたしなぁ。。。と幾度も不安になってしまう。ここが海のイメージの強いイル・デ・パンだとは思えないような木々の匂いの中を、滑らないようにゆっくり歩いていった。

汗ばむほどの快晴。上に目を向けると緑の中から真っ青な空が、途切れ途切れに顔を出す。鳥の鳴き声も心地よく森林浴を満喫していると、道のど真ん中にいきなり大きなヤシガニが登場。海が近いんだなぁ。。。としみじみ実感してしまった。

 小1時間歩いただろうか、目の前が急に明るくなりどこかで見た景色が広がる。ピッシンヌナチュレルだ!!・・・ん?ああ、ここはナチュレルに行く途中の、あの小屋のところじゃないか。なるほど、ここに出るんだなぁ。。。と思いながら朝の雲はどこへやら。突き抜けるほどの真っ青な空に2人とも思わず顔がにやけてしまう。その小屋が本日のランチタイムの憩の場となるのを確認し、舗装された道から吊り橋まで戻った。

 途中、瑠璃色の蝶が飛んでいたのだが、これが実に美しい。羽を閉じて止まっていると枯葉色なのに、飛び立った途端に目を奪われるほどの瑠璃が鮮やかに舞う。そのとき私の頭にふとよぎったのが、ライブラリーに置いてあった

「金田一少年の事件簿」の“黒死蝶殺人事件”だった。(なんでイル・デ・パンで金田一??)と思いながらもマンガ好きの私は昔読んだにもかかわらずそれを部屋に持って帰った。そのときはなんとも思わなかったが、蝶を見たとたんに糸が繋がった気がした。この話の中に瑠璃色の蝶が出てくるのだが、羽を閉じた時に茶色になった姿からコノハチョウと呼ばれていて、この蝶が事件の鍵を握る大きなポイントになっているという筋書きである。

(イル・デ・パンに、ここに来たことのあった人がこの蝶を見て、再度この地を訪れた時に金田一少年の本をライブラリーに寄贈した。そしてここを訪れる人は金田一を読んで、自然の中で優雅に飛び回る蝶を見ながら、内容を思い出し少ししんみりと・・・)って、どうしてこんなところでそんな風にならなくちゃいけないの。全く私の推理?なんてこんなもんです(恥)

 メリディアン前のビーチは満潮で、キラキラと輝いていた。2人乗りのペダルボートを借りて沖へ向かう。この海の砂もかなりの白さで、沖から見たオロ湾もこれまた一味違った景色。きれいだなぁ。。。という言葉しか出てこないことに歯がゆくなりながら洋上での至福のひと時にどっぷり浸っていた。

 さて、お待ちかねのブーニャランチ。マウンテンバイクをレンタルしてさっきてくてく登った道を颯爽と滑り降りる。お店に到着するとけっこう席が埋まっており、少し焦る。みんなのテーブルを見るがブーニャはまだのようだった。ブーニャとは、ニューカレドニアのメラネシア系の人々がお祝いの時に食べる特別料理の郷土料理で、材料はヤムイモ・タロイモなどのイモ類を主として、鶏肉(もしくは魚)を丸ごといれ、バナナやニンジンなどの野菜も加えてココナッツミルクを味付けにし、バナナの葉でしっかり包み、蒸し焼きにしたものだ。しばらくすると店の外側あたりがなにやらざわざわしてきたので、そろそろだな、と思いカメラを片手に席を立つ。

 こんもりと盛られた土をスコップで崩していくと中からダンボールが出てきて、それをさらに剥がしていくと石やバナナの葉の包みが表れた。観光客は今からありつける料理にわくわくしながらビデオやカメラを片手に、撮影に必死のようだ。我々は一足先に席に戻り、喉を潤しながら待つことにした。私自身はココナッツミルクが苦手で、芋にもそれほど執着がない方だったのだが、このブーニャは素晴らしかった。失礼ながら少々泥臭い感じのする郷土料理をイメージしていたのだが、ここでもフランス領の威力を見せ付けられたような気がした。鶏肉のジューシィな肉汁が野菜に染み込み、くどくないココナッツミルクの味付けが抜群にいい。ワインにもよく合う旨さだった。

 ふと気付くと足元に猫が寄ってきた。この店の飼い猫だろうか?先ほどから店の中を我が物顔で闊歩していたようだが、ブーニャの香りに誘われてきたのか、じっとこちらを見ているようだ。柔らかく蒸された鶏を小さくちぎってやると、ぺろりと平らげてはまたねだるような上目遣いをしてくる。少し大きめのイモを投げてやると、口はつけるものの最後まで食べない。肉がいいのか。。。ぜいたくな猫だと思いながら、骨の周りについた肉片をちぎってはポイしてしばらくの間猫遊び。

 ランチのあとはマウンテンバイクでバオ村まで行くことにした。距離的におそらく10キロほどだろうか。ただ、かなり坂道がある。エネルギーは充填したばかり、ちょっとは消費しないと2人ともますます横幅の豊かな人になってしまう・・・ということでとにかく行けるとこまで行ってみようと、2人で漕ぎ出す。道はアスファルト舗装されているので走りやすくて、天気も上々。心地よい風を受けながら機嫌よう進んでいると、早々と坂道にぶつかった。このレンタルバイクはギアチェンジがないタイプで、坂をあがるにはおもいきり助走をつけていかなければいけない。簡単に制覇できるレベルのものからどうあがいてもムリなほど急なものまで。久々のハードな動きに悲鳴をあげながら、坂を上りきったてっぺんから後ろを振り向いた時に見えた水平線のように並ぶ南洋杉の群れと、雲ひとつない空とが達成感をさらに満足させてくれた。

 道の脇でのんびり草を食む牛や、なにやら作業をしている女性たち。鳥の声を聞きながら車に気をつけつつ走行。息が切れてくると後ろから追い抜かされる観光客用のバンを少し恨めしく思いながらも、漕いで走って1時間。バオ村の看板を越えたときはすっかり汗だくになっていた。ガイドブックの簡単な地図を頼りにミニスーパー(といってもイル・デ・パンで一番大きな店らしい)を目指すも、なんとCLOSED。「これが目当てだったのに・・・」とがっくり肩を落とす彼。ガラス窓から覗く店内にNO.1ビールを発見した私もよけいに喉の渇きを刺激されてぐったりとしてしまった。とはいえその周辺から見える海と空も美しく、教会もかわいらしくて、たまにはストイックもいいかと、またペダルに足をかけたのだった。

 この日はディナーの前に「メラネシアンサラダ講習会」なるものが開催された。大根、ニンジン、キャベツなど見慣れた野菜から、米ナスのように大きなナス、昼に食べたヤムイモ、レモングラスやココナッツが丸ごと並べられていた。前日に海が荒れていて残念ながらロブスターはナシとなったが、魚介類をサイコロ状に切ったものやこれらの野菜の好きなものを適当に混ぜ、ココナッツミルクに塩と胡椒を加えてできあがりだ。スタッフのお兄さんが見事な手付きでココナッツを真っ二つに割ると中には透明の液体が入っていて、味見をさせてくれた。これ自体はココナッツミルクの味という感じではなかったのだが、ココナッツの皮の内側にびっしりとある真っ白いモノ・・・これを専用の削り器でうまい具合に削って、搾ったものが新鮮なココナッツミルクとなるようだ。イル・デ・パンにはそこらへんにごろごろところがっているようで、なるほど、昼間のココナッツミルクもこういう新鮮なものを使ったからこそよけいに美味しかったんだろうなぁと深く納得。

 お兄さんが、誰かココナッツを割ってみないか?と声をかけてくれたが集まった人はみんな尻込みしてか、誰も手を挙げない。私は本日がここでの最後のディナーということもあり、嬉しがって新しいワンピースとショールを羽織っていたのだが、このままではお兄さんが辛いだろうと思い、はい!と手を上げてしまった。まずココナッツを左の手に乗せる。大きなナタのようなものを上から振り下ろしてヒビを入れていき、隙間があいたらそこからナタ先を入れてぐいっとひねるのだが、思った以上に固くなかなかヒビが入らない。何度か戦闘しているとようやく隙間が出来たので、一気にひねったところうまい具合にパッカリと割れて、みんなから温かい拍手を頂いた。なかなかいい経験をさせてもらったと思う。できあがったサラダは塩コショウがきいていてなかなかおいしかった。